2008年12月17日

「障害と開発」~フィンランドのNGOの取り組み

ONCの会員の岩田直子さんが現在イギリスのリーズの大学で研究をなされています。岩田さんからの素敵なお便りが届いています。彼女の面白いサイトがありますので覗いてみてください→こちら
以下は、岩田さんの書いた「障害と開発」~フィンランドのNGOの取り組み です。ご覧下さい。


国連が12月3日を「世界障害者の日(International Day of Person with Disabilities)」と定めていることをご存知でしょうか。

毎年、この日を記念して世界各地で障害者に関するキャンペーンや大会が開催されます。

私は、今年、ベルリンで開催された「障害と開発」に関する国際大会に出席することができました。
大会のタイトルは、Nothing About Us Without Us—Persons with Disabilities as Actors of Sustainable Development (わたしたち抜きでわたしたちのことを決めないで—持続可能な社会開発の担い手としての障害者)。
 主催は、途上国の障害者の生活を支援しているドイツのNGO団体で組織された実行委員会でした。
出席者は、ジンバブエや南アフリカ、インド、フィリピン、ドイツ、イギリス、フィンランド、スウェーデン等などから参加していて、とても楽しく情報交換をすることができました。

一部ではありますがご紹介したいと思います。
その前に、「障害と開発 (Disability and Development)」って何なの?と思う方もいるかと思いますので、簡単に説明したいと思います。
「障害と開発」とは、「開発」の実践や議論の中に障害者に関することもきちんと取り入れていこうという考え方です。
今までは、障害者に関することは、特別の分野でよくわからない=社会福祉や医療の専門家が扱うもの・・・と考えられていましたし、かわいそうな障害者に手を差し伸べようという恩恵のまなざしにあふれていました。しかし、実践を重ねる中で、むしろ、障害者に関することを社会開発のテーマとして考えた方が良い方向に向かうことがわかってきました。特別のものとして分離して考えるのではなく、人権の視点をベースにして開発の議論の中にしっかり組み入れ(mainstreaming)、開発全体の動きの中で障害者の支援や権利擁護をしていこうというわけです。  
WHOは、世界の人口の10%(約650億人)が障害を持っていて、その人口の8割が(約400億人)が途上国に住んでいると推定しています。途上国の障害者は経済的にも社会的にも排除され、医療、教育、雇用、社会生活など、人間の生活に欠かせないことにアクセスすることが難しい状況にあります。障害者は貧困層の中でもさらに貧困の状態にある(poorest of the poor)わけで、ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals;MDG)を達成するためにも社会開発の中でしっかり議論や実践をしていくことが求められています。

さて、今回の大会では、途上国側と先進国側両方のNGO団体や、障害者の国際NGOのリーダー等から活動報告がありました。
その中で、私は、FIDIDA (Finnish Disabled people's International Development Association)という北欧・フィンランドのNGOの実践にとても関心を持ちました。FIDIDAは、1989年、「障害と開発」に関心を持つ7つの障害NGOによってスタートしました。途上国の障害者の権利擁護と障害者の生活状況を良くしていくことを活動目標としていて、そのために障害当事者が平等に参画することを基本としています。
 
「障害と開発」~フィンランドのNGOの取り組みそもそも、フィンランドは、1981年の国際障害者年とそれに続く「国連障害者の十年」がきっかけとなって途上国の障害者の実態に関心が向けられるようになったという社会背景があります。今から20年以上前のことです。障害者運動の担い手たちの活躍も大きな原動力でした。また、スウェーデン、ノルウェー、デンマークの関連NGOと連携して資金調達の仕組みを作ったことが「障害と開発」の実践を発展させることにつながりました。
こうしたフィンランド社会の状況の中で、FIDIDAはどのような活動をしているのでしょうか。講演の内容にウェブサイトの情報を加えてご紹介したいと思います。

まず、FIDIDAの活動ですが、「障害と開発」に関してサービスを提供したり連携を図ったりする機関として、
①障害者の権利擁護(advocate)
②「障害と開発」に関して途上国で情報提供や研修を実施する
③国際開発協力の関係者に障害のことを理解してもらい活動に取り入れるよう働きかける
④フィンランド政府がしっかり社会開発に取り組んでいるかNGOの立場から 監視する(watch dog)
ことを実施しています。講演では、2006年に採択された国連の「障害者の権利条約」を促進する役でもあることも強調していました。「障害と開発」~フィンランドのNGOの取り組み

もう少し具体的に言うと、以下のとおりです。
①組織運営の支援(Organizational Development)
②啓発活動と権利擁護(Awareness and Advocacy)
③バリアフリー(Accessibility)
④リハビリテーション(Rehabilitation)
⑤経済的支援(Income)
⑥教育権保障
現在、FIDIDAのプロジェクトは、ジンバブエ、モザンビーク、カンボジアの障害者団体と連携を図りながら進行しています。


FIDIDAの講演で印象に残ったことは、FIDIDAの姿勢です。途上国のNGOと、“お互いに尊敬し、共に学びあう(Mutual respect. Both are learning)”ことや、“お互い高めあえる関係(Mutual reinforcing communication)”を大切にしていました。また、“社会開発=変化を起こすこと(to make change)”だととらえていたことも印象に残っています。 今、報告を書きながら気になったのですが、こうした姿勢を維持するためにどのような工夫をしているのでしょうね。考え方は素晴らしいのですが、自己満足に陥らないための工夫についても知りたいと思いました(大会期間中に気づけばよかった・・・)。


FIDIDAのウェブサイト(英語版)はこちら→ http://www.fidida.fi/english/

  


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